食物繊維と腸内環境
食物繊維を摂りすぎるとどうなるの?食物繊維をうまく摂って健康を維持しよう!
食物繊維を摂りすぎるとどうなるの?食物繊維をうまく摂って健康を維持しよう! ~目次~
食物繊維とは
食物繊維は炭水化物の一種です。体内の消化酵素では消化できず、大腸までたどり着きます。 食物繊維には水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と水に溶けにくい「不溶性食物繊維」の二つがあります。
食物繊維は主に以下のような仕事をします。
・不要物を吸着して排出
・水分を含み、便を柔らかくする
・便のカサを増やす
・物理的に腸壁にへばりついて、糖質の吸収を邪魔する
・血糖値上昇を抑制
・血液中のコレステロール濃度の低下
・腸内フローラの健康維持
かつては「不要なもの」とされていましたが、最近では厚生労働省が生活習慣病の重症化率との関連について調べています。そして目安量の積極的な摂取を勧めています。
食物繊維はどのくらいが適量か
サプリメントや食品に「この商品は一つで10gの食物繊維がとれます!」といった文言や、「レタス〇個分の食物繊維」と書かれているのを見たことありませんか?はたしてそれが多いのか少ないのか。いまいちわかりませんよね。
では、そもそも食物繊維は、一日何グラムを摂る事が良いとされているのでしょうか。
食物繊維の平均摂取量
内閣府が2014年に調べた「日本人における食物繊維摂取量(平均値)の推移」では、1950年ごろには一日当たり20.5gあった摂取量は年々減少し、2010年時点では6割程度の13.7gにまで減少しています。
日本人の食事は、かつて雑穀中心で粗食でした。ところが、60年間で食生活の欧米化が進み好きなものが食べられるようになっている反面、脂質や糖質の摂取量が増え、食物繊維の摂取量は減少しています。特に若年層の不足が顕著です。
食物繊維の食事摂取基準
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」2020年版では、食物繊維の一日の摂取目安量として成人女性であれば18g以上、成人男性であれば21g以上を採るように勧めています。
ところがこちらは、現代の日本人における食物繊維の摂取量があまりに少ないことから設定された「実現可能な努力目標」。
日本人の食事摂取基準には、理想的な摂取量は一日当たり24gということも書かれています。
ところが実際には、令和元年「国民健康・栄養調査」にある通り、平均的な食物繊維の摂取量は女性が17.5g、男性が19.4g。年代別で見ても60歳以上の女性と70歳以上の男性以外は、目安量を達成していません。
理想的な食物繊維摂取量を達成している年代は男女ともになし。すべての日本人において食物繊維摂取量は不足していることがわかります。
性別や年齢による必要量の違い
年齢別の食物繊維の摂取目安量を見ると、男性の方が多く設定されています。
これは目安量を算定する計算式が、体重を基準に作られているため、平均体重が重くなる男性の方が、女性と比べて食物繊維の必要量が多くなっているということです。
食物繊維の必要量においては、性別によって差異はありません。男女関係なくそれぞれの体格に合わせた量をとるべきと読み取れます。
またライフステージにおける影響についても、同様に妊婦や授乳婦、子供であっても同じ算定式を用います。妊婦の場合には胎児の体重分が増えますが、その分を多めにとる。ということになります。
食物繊維の摂取は、年齢や性別によって変わるものではなく、長期に習慣的な摂取を心がけるべき。ということを覚えておくといいでしょう。
食物繊維が足りてるかの目安は?
食物繊維が足りているかを判断するためには、体からのサインを見落とさないことが大切です。 同時に食物繊維が不足しているかも知ることができます。
食物繊維が足りているサイン
・一日一回排便がある
・規則的に排便がある
・排便の量は150g(見た目ではMサイズの卵で約3個分)程度ある
・便の色が黄色
・程よい硬さで楽に出せる
・水洗トイレの水に浮く
腸内環境は、腸内に良いことを始めたらすぐに劇的な変化を遂げるわけではなく、一日一日徐々に変化していきます。今日始めたら、明日から快便!なんてことはありませんので、気長に取り組むことが大切です。
食物繊維を過剰にとりすぎるとどうなる?
食物繊維を食事だけでとっている場合は、摂りすぎになる心配はまずないでしょう。
しかし、普段からサプリメントやトクホ食品で食物繊維を補給している場合には少し注意したほうが良いポイントがあります。
食物繊維を摂ってるのに、それが原因で便秘になることがあるの?
不溶性と水溶性、二つの食物繊維を間違えて使ってしまうと、下痢や便秘の原因となることがあります!
便秘になる
便秘とは「便を充分に排出できていない状態」です。
口から入る食事や飲み物の量は、一日約2リットル程度。その他にも胃腸から分泌される消化液と混ざることで、大腸にはそれよりも大量の水分が流れ込みます。
その水分のほとんどは、大腸を通る時に吸収されて、残りが塊となり、便として排出されます。
不溶性食物繊維は水分を吸収して、便のカサを増やす性質があります。便秘に悩む方が、不溶性食物繊維だけを大量に摂っていると、便になる塊の水分量がどんどん不溶性食物繊維に吸収されてしまい、便へと充分行き届かなくなるため、便が固くなってしまいます。
硬い便は強くいきまないとでなかったり、残便感などの不快感に繋がります。
不溶性食物繊維のサプリメントを使うときには、普段よりも多めに水分を取るのがおすすめですよ!
下痢を起こしやすくなる
食物繊維の中でも水溶性食物繊維は、水分をたっぷりと含むことで便を柔らかくします。そのため、体質によっては過剰に摂りすぎることで下痢になってしまう可能性があります。
特定保健用食品や、食物繊維を謳う飲料などにも使われているので、知らず知らずのうちに過剰に摂ってしまう可能性があります。良く成分を確認しましょう。
水溶性食物繊維は、あくまでも食事で不足してしまう分の補給として一日3g程度を目安に補給することをお勧めします。
栄養吸収を邪魔する
水溶性食物繊維は腸にへばりつくことで、物理的に糖質の吸収を邪魔します。そのため、過剰に食物繊維を摂ると本来体にとって必要な栄養の吸収も邪魔してしまうことになりかねません。
どのくらい摂りすぎると良くないのかは一概には言えませんが、食物繊維サプリメントは目安量を摂ることが望ましく、過剰な摂取はデメリットになることがあると覚えておきましょう。
食物繊維が多く含まれる食品
食物繊維が多く含まれる食材は主に野菜や豆類、海藻などが挙げられます。
食物繊維が豊富な食材①:野菜類
可食部100g当たりに含まれる食物繊維量
品目 | 100g当たりの食物繊維総量 | 100gの目安 |
---|---|---|
枝豆(生) | 5.0g | 40~50さや |
ごぼう | 5.7g | 約2分の1本 |
キャベツ(生) | 1.8g | 葉3~4枚 |
とうもろこし(生) | 3.0g | 大き目約4分の1本(芯含む) |
かぼちゃ(ゆで) | 2.8g | 約12分の1個(煮物4切れ程度) |
にんじん | 2.8g | 4分の3本 |
ブロッコリー(生) | 4.4g | 4房 |
ほうれん草(生) | 2.8g | 4株 |
食物繊維が豊富な食材②:果実類
品目 | 100g当たりの食物繊維総量 | 100gの目安 |
---|---|---|
キウイ | 2.5g | 約1個 |
いちご | 1.4g | 3~4個程度 |
バナナ(生) | 1.1g | 2本程度(皮除く) |
りんご | 1.4g | 約3分の1本(皮含む) |
ブルーベリー | 3.3g | 約81粒 |
すいか | 0.3g | 3cm角カット果肉3つ分 |
オレンジ | 1.0g | 約5分の3個 |
食物繊維が豊富な食材③:海藻類
品目 | 100g当たりの食物繊維総量 | 100gの目安 |
---|---|---|
ひじき(ゆで) | 3.7g | 小鉢10皿分 |
わかめ(生) | 3.6g | 大きめ2株程度 |
わかめ(乾燥) | 5.8g | 水に戻すと約17倍の1766g。 |
食物繊維が豊富な食材④:きのこ類
品目 | 100g当たりの食物繊維総量 | 100gの目安 |
---|---|---|
えのき | 3.9g | 0.5株 |
しいたけ | 4.2g | 約4個 |
ぶなしめじ | 1.9g | 1パック |
なめこ | 3.3g | 1パック |
エリンギ | 3.4g | 1パック(2本入り) |
食物繊維が豊富な食材⑤:豆類
品目 | 100g当たりの食物繊維総量 | 100gの目安 |
---|---|---|
あずき(ゆで) | 11.8g | ぜんざい1杯程度 |
大豆(乾) | 16g | 250粒 |
きな粉 | 18.1g | 2分の1カップ |
木綿豆腐 | 0.4g | 3分の1パック |
納豆 | 6.7g | 2パック |
食物繊維が豊富な食材⑥:穀物類
品目 | 100g当たりの食物繊維総量 | 100gの目安 |
---|---|---|
食パン | 2.3g | 8枚切り2枚程度 |
うどん | 0.8g | 0.5人前 |
玄米 | 1.4g | おにぎり1個程度 |
うるち米 | 0.3g | 茶碗1杯弱 |
そば | 2.0g | 1人前 |
栄養成分表は100g当たりの含有量を記載されていますが、食物繊維が豊富だからと焼き海苔を100g食べる人はあまりいないいでしょう。
ここで紹介する食材単体で食物繊維をとるのではなく、食事の選択肢が複数あった時により食物繊維を多く含むものを摂る。あるいは、食材を購入する際に選択肢として優先して選ぶ。とうまく活用することで、食物繊維が摂れる食卓を目指しましょう。
食物繊維を摂りすぎたときの対処法
摂りすぎた食物繊維の特徴を理解するとおのずと対策は導き出されます。
通常の食事だけで食物繊維を摂りすぎることはあまり考えにくいですが、サプリメントなどで過剰に摂りすぎるとこのようなことが起こる場合があります。
それぞれの食物繊維が持つ特徴として以下のものがあります。
・不溶性食物繊維…腸内の水分を抱えて膨らみ、便のカサを増やす。お腹のハリやオナラが増える・便秘になるようであれば、摂取量を見直しましょう。
・水溶性食物繊維…水分でゼリー状になり、便と混ざることで柔らかくする。また腸壁にへばりついて物理的に吸収を邪魔する。下痢になったり栄養吸収の不足を感じるときは摂取量を見直しましょう。
このほかによくあるお悩みは「太ってしまった」というケース。
食物繊維を摂ろうとするあまり、食物繊維豊富なサツマイモや果物を摂りすぎて、カロリーオーバーになってしまうことがあります。
そんな時にはカロリー面、便秘対策としてストレッチや運動も一緒に行うのがおすすめです。
食物繊維のサプリメント
基本的には食生活で充分な食物繊維がとれていれば、サプリメントは必要ありません。ですが、毎日十分な量の食物繊維を摂れる食事を作るのは大きな負担になったり、家庭の事情によって難しいこともあると思います。
上にも書いた通り、必要以上に摂りすぎると不調にもつながりますので、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維それぞれの特徴を理解して、ご自身にあったサプリメントを選ぶようにしましょう。
食物繊維の摂り過ぎまとめ
食物繊維を意識して摂ることはもちろん大切ですが、極端な摂取をしないような注意が必要です。 何となく健康に良さそう。と購入して時間もお金もかけたのに、それで体調を崩しては元も子もありません。 必要な情報を賢く選んで、健康的な生活の一助としていただけると幸いです。
参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
参照:内閣府「日本人における食物繊維摂取量)(平均値)の推移
参照:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」
参照:文部科学省 日本食品標準成分表
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